化学-軌道

化学

軌道に関して覚えておいて欲しいこと

(1) 電子は, 空間を移動するとき, 波(波動関数ψ)として存在している

(2) 電子の位置は確率的\((|ψ|^{2})\)でしかわからない(一般に測定値を予言できない)

(3) 電子が入る軌道には, s軌道, p軌道, (d軌道, f軌道, …)などがある

(4) 各軌道(小軌道)の横線の数は, s軌道は1 つ, p軌道は3 つ, (d軌道は5 つ, …)

(5) エネルギー準位が低い順に, 1s, 2s, 2p, 3s(, 3p, [4s, 3d], ⋯ )と続く

(6) 1p, 2d軌道などは存在しない(主, 方位, 磁気量子数の関係から制限がある)

(7) 電子は, できるだけエネルギー準位が低い電子軌道に入る(構造原理)

(8) 電子は(5)の順[1s, 2s, 2p, ⋯ ]に入る[(7)の規則に基づく]

(9) パウリの排他原理により, 1 つの横線には↑(アップスピン) および↓(ダウンスピン)の, 2 種類の電子しか入らない

(同一の量子状態をとれない)
⇒↑↑や↓↓は不可

(10) フントの規則により, p軌道(もちろんd軌道なども)に複数の電子が入る場合, まず
↑(アップスピン)が全て入った後, ↓(ダウンスピン)が入る(電子の反発を抑えるため)

(11) 軌道の図(電子雲)は, 存在確率が90~95%程度で区切ったものである

(12) 節(node)における電子の存在確率は0(波動関数の値が0)

 

例題

以下の原子の基底状態の電子配置を示せ.
(1) B(ホウ素)

(2) F(フッ素)

 

<解答>はここをクリック

(1) B(電子数:5 個)

(2) F(電子数:9 個)

混成軌道の電子配置

混成…原子上の原子軌道を混合する概念→混成前と異なるエネルギー/形状をもつ
(昇位にエネルギーが必要だが, 混成すると分子全体のエネルギーが低くなる)

σ結合…結合軸方向を向いた原子軌道同士の結合(共有結合)
(軌道が重なることで存在確率が大きくなる→結合/結合力は強い/回転可能)

π結合…隣り合った原子同士の電子軌道の重なりによってできる結合
(軌道の重なりは小さい→結合力は弱い[σ > π]/回転不能[切断が必要])

s性が高い…電子が陽子に近い(pよりsが陽子に近い)→電子が安定になりやすい(→酸性度が高い)

 

※1「赤線+青線」の中の電子数は, 混成前後で(当然)等しい.

※2 混成することによって等価な結合を作り出す

 

・混成軌道を作る手順

(ⅰ) 2pに空軌道がある場合, 2s軌道の電子一つを, 2pのできるだけ左側の空軌道にいれる
(昇位させる, という. エネルギーを使うが, 電子の反発が抑えられ, 結果的に全体としてエネルギーが低くなる.)

(ⅱ) 2sと, 2pのできるだけ左側を用いて, \(sp^{3}\), \(sp^{2}\), sp混成をする

(ⅲ) フントの規則に基づいた並べ方をする(電子が二つ入った横線は左に寄せる)

(例)—ホルムアルデヒド(CH2O)の, 酸素の混成軌道

・酸素(2重結合1つ→\(sp^{2}\)混成)

 

・炭素原子……\(sp^{2}\)混成

例題

以下の分子の構造に対し, 指定した混成軌道の電子配置と, 1軌道以外の軌道をすべて図示し, 説明せよ

(σ結合, π結合,(lone pairがどれか示せばよい).

 

(1) エチレン(C2H4 ∶ CH2 = CH2), Cの混成軌道

(2) 窒素(N2 ∶ N ≡ N), Nの混成軌道

(3) 二酸化炭素(CO2 ∶ O = C = O), Cの混成軌道

(ヒント : (1)(sp^{2}\)混成, (2)(3)はsp混成)

 

<解答>はここをクリック

(1) 炭素原子—\(sp^{2}\)混成

 

(補足)

 

(2) 窒素原子—sp混成

 

(3) 炭素原子—sp混成

 

(補足:酸素原子—\(sp^{2}\)混成)

 

(補足)

σ結合を図示する際, あたかも原子と結合する側にしか軌道が広がっていないように描いているが, 実際にはσ結合の反対側にも小さな房のような軌道がある.

しかし, それらをすべて描いていると見にくくなってしまうため, 一般的には省略する.

混成という概念は, 結合の実験事実を説明するために作られたものである

(基底状態の不対電子の数では実験を説明できなかったため, 等価な結合の考え方を作り出した).

例えば,メタン(CH4)のように等価な結合が4 つ必要なら, \(sp3\)混成を考えれば説明できる, という具合である.

なぜこうなるのか, という考え方よりも, こういう考え方をしたらうまくいく,と捉えたほうが勉強しやすいかもしれない.

 

(余談)

σ(sigma), π(pi)はギリシャ文字で, 英語に戻すとσs, π pに対応する.

s軌道の重なりを代表にとってσ結合, p軌道の(結合軸と垂直の)重なりを代表にとってπ結合という名前がついている

(あくまで代表なだけで, 他の軌道を使った結合でもσ結合, π結合という).

他にも, d軌道と同じ軌道対称性を持つ結合をδ(delta)結合といったりする.

 

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