線形空間と部分空間

工学科目

線形代数で扱う線形空間・部分空間を図を用いてよりわかりやすく説明します。

線形空間

線形空間とは, 今まで矢印でよく扱ってきたベクトルを, 矢印で表せないような4次元以上のベクトルや, 関数, 行列などにも同様な演算ができるように定義された抽象的なものである.

一般に成り立つものであるから, 当然3次元以下の矢印のベクトルに関しても成り立つので, よくわからないときは, まず図に描けるような空間をイメージして, それをより一般的に使えるものにした, 程度に考えて欲しい.

線形空間の例として, 以下のようなものがある.

\(
\boldsymbol{R^{2}}= \{ \boldsymbol{a}=\begin{pmatrix}
a\tiny{1} \\
a\tiny{2}
\end{pmatrix} |ai∈\boldsymbol{R} (i=1,2)\}
(xy平面)
\)

a,bが\(\boldsymbol{R^{2}}\)の元ならば, a+bも\(\boldsymbol{R^{2}}\)の元

aが\(\boldsymbol{R^{2}}\)の元, p ∈ \(\boldsymbol{R}\)ならば, paも\(\boldsymbol{R^{2}}\)の元

※「元」は「げん」と読む

これを図に描いてみると, 以下のようになる.

a+b, paはどちらも平面上(\\boldsymbol{R^{2}}\)に存在する ⇒ 線形空間

 

また,a ,b が一次独立の時,a ,b は\(\boldsymbol{R^{2}}\)の基底となる.

基底の取り方は複数あるが, 基底の個数は線形空間に固有の物であり, n= dimVである.

この例では\(\boldsymbol{R^{2}}\)なので, 当然 n= 2である.

(2 次元空間では, 基底が1 つだと任意のベクトルを表せないし, 基底が3 つだと従属な関係が存在してしまうのは想像できると思う. どのような線形空間でも考え方は同じである.)

 

部分空間

以下のW1, W2\(\boldsymbol{R^{2}}\)は, \(\boldsymbol{R^{2}}\)の部分空間であるかどうか判定してみる. ただし,\(\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix}
x\tiny{1} \\
x\tiny{2}
\end{pmatrix}\)とする。

\(W\tiny{1}\)\(=\{\boldsymbol{x}∈\boldsymbol{R^{2}}|2x\tiny{1}\)\(-x\tiny{2}\)\(=0\}\)
\(W\tiny{2}\)\(=\{\boldsymbol{x}∈\boldsymbol{R^{2}}|x\tiny{1}\)\(+x\tiny{2}\)\(=1\}\)

 

<記号の意味>

\(\boldsymbol{R^{2}}\) ⋯ 2 次元ユークリッド空間(=平面)
\(W⊂\boldsymbol{R^{2}}\) ⋯ Wは\(\boldsymbol{R^{2}}\)の部分集合(Wは\(\boldsymbol{R^{2}}\)の中に全て含まれている)

 

\(W\tiny{1}\)は\(y\tiny{1}\) \(= 2\)上の点の集合,
\(W\tiny{2}\)は\(y\tiny{2}\) \(= 1-x\)上の点の集合と考えることができる.
(\(x\tiny{1}\)をx, \(x\tiny{2}\)をyと見立てる)

部分空間は, W内の任意の2つのベクトルの和と, 任意のベクトルの定数倍がW内にあることが条件であるが, 図から\(y\tiny{1}\)の直線は満たすものの, \(x\tiny{2}\)の直線は満たさないことが分かる.

これを, 以下の定理を用いて数式で示してみる.

<定理>

Wを, R(C)上の線形空間Vの空でない部分集合とする.

(ⅰ) a, b ∈ Wならばa + b∈ W
(ⅱ) a ∈ W, p ∈ R(C)ならばpa ∈ W

を満たすとき, WVの部分空間であるという。

\(W\tiny{1}\)\(=\{\boldsymbol{x}∈\boldsymbol{R^{2}}|2x\tiny{1}\)\(-x\tiny{2}\)\(=0\}\)

\(\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix}
a\tiny{1} \\
a\tiny{2}
\end{pmatrix}, \boldsymbol{b}=\begin{pmatrix}
b\tiny{1} \\
b\tiny{2}
\end{pmatrix}∈W\tiny{1}\)とすると、\(2a\tiny{1}\)\(-a\tiny{2}\)\(=0\),\(2b\tiny{1}\)\(-b\tiny{2}\)\(=0\)

(教科書ではx,yを用いているが、部分集合の文字(\(x\tiny{1}\),\(x\tiny{2}\))と重なって混乱するもととなるので、
ここではa,bを用いる)

\( 2(a\tiny{1}\) \( +b\tiny{1}\)\()-(a\tiny{2}\)\(+b\tiny{2}\)\()=(2a\tiny{1}\)\(-a\tiny{2}\)\()+(2b\tiny{1}\)\(-b\tiny{2}\)\()=0\) より, a+bW1
(W1x1に\(a\tiny{1}\)\(+b\tiny{1}\), x2に\(a\tiny{2}\)\(+b\tiny{2}\)を代入した)

\( 2(pa\tiny{1}\) \()-(pa\tiny{2}\)\()=p(2a\tiny{1}\)\(-a\tiny{2}\)\()=0\) より, pa∈ \(W\tiny{1}\)
(\(W\tiny{1}\)の\(x\tiny{1}\)に\(pa\tiny{1}\), \(x\tiny{2}\)に\(pa\tiny{2}\)を代入した)

よって,\(W\tiny{1}\)は \(\boldsymbol{R^{2}}\)の部分空間である.

\(W\tiny{2}\)\(=\{\boldsymbol{x}∈\boldsymbol{R^{2}}|x\tiny{1}\)\(+x\tiny{2}\)\(=1\}\)

\(\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix}
a\tiny{1} \\
a\tiny{2}
\end{pmatrix}, \boldsymbol{b}=\begin{pmatrix}
b\tiny{1} \\
b\tiny{2}
\end{pmatrix}∈W\tiny{1}\)とすると、\(a\tiny{1}\)\(+a\tiny{2}\)\(=1\),\(b\tiny{1}\)\(+b\tiny{2}\)\(=1\)

\( (a\tiny{1}\) \( +b\tiny{1}\)\()+(a\tiny{2}\)\(+b\tiny{2}\)\()=(a\tiny{1}\)\(+a\tiny{2}\)\()+(b\tiny{1}\)\(+b\tiny{2}\)\()=2≠1\) より, a+bW2
(W2x1に\(a\tiny{1}\)\(+b\tiny{1}\), x2に\(a\tiny{2}\)\(+b\tiny{2}\)を代入した)

よって,\(W\tiny{2}\)は \(\boldsymbol{R^{2}}\)の部分空間ではない.(部分集合である)

定数倍も確認してみると

\( (pa\tiny{1}\) \()+(pa\tiny{2}\)\()=p(a\tiny{1}\)\(+a\tiny{2}\)\()=p\) より, pa ∉\(W\tiny{2}\)
(\(W\tiny{2}\)の\(x\tiny{1}\)に\(pa\tiny{1}\), \(x\tiny{2}\)に\(pa\tiny{2}\)を代入した)

この例で分かるように, 少なくとも原点を通る部分集合(零ベクトル[]をもつ部分集合)でないと部分空間ではないので, 先に原点が含まれているか確かめると良い.

ただし, 原点を通っていても部分空間でないことはある.

例えば, x軸の, x ≥ 0の部分集合は部分空間ではない(p < 0の時, paWである).

コメント

タイトルとURLをコピーしました