イプシロンデルタ論法

工学科目

<定義>

$$
xがaに近づくとき, f(x)の極限値はbである
$$
↕︎
$$
任意のε> 0に対してあるδ> 0が存在して
$$
$$
0 < |x − a| < δ ⇒ |f(x) − b| < ε
$$

 

ざっくりいうと(大抵の場合正しいが一部誤り有)

「x = aからδ離れたf(a ± δ)の内側のf(x)が極限値bからε以内に収まっていればよい」

 

(注意)

f(a)は定義されていなくても問題ない(連続の必要がない : x = aを考えていない).

また,一般に,ε(error)が小さくなるにつれてδ(distance)も小さくなる(εN法はε→小でN→大).

 

<例題>

以下の関数が収束することを厳密な定義( ε−δ法)に基づいて証明せよ.

(1) x1に近づくとき, \(f(x)=−x^{3}+3x^{2}−3x\)が−1に収束する.

(2) (やや難) x−1に近づくとき,\( f(x) = x^{3} \)が−1に収束する.

 

<解答>はここをクリック

(1)任意の(> 0)に対して

\(0 < |x − 1| < δ ⇒ |f(x) − (−1)| < ε …①\) となるδ(> 0)を見つければよい.

\(|f(x) − (−1)| = |−x^{3} + 3x^{2} − 3x + 1| = |−(x − 1)|^{3} = |(x − 1)|^{3} < δ^{3} ≤ ε\)

ここで, \(δ = ε^\frac{1}{3}\)ととると, ①を満たす.

よって, が1に近づくとき, f(x)−1に収束する.

 

(補足) 具体的に値を入れて計算し, グラフに落とし込んでみると理解が深まる.

例えば, ε = 0.1とすると, \(δ = ε^\frac{1}{3}=(0.1)^\frac{1}{3}\)

 

(2)任意の(> 0)に対して

\(0 < |x + 1| < δ ⇒ |x^{3} + 1| < ε\)となるδ(> 0)を見つければよい.

 

\(0 < |x + 1| <δ\)ならば

\(|x^{3} + 1| = |(x + 1)(x^{2} − x + 1)| ≤ |x + 1|(|x^{2}| + |x| + 1) < δ^{3} + 3δ^{2} + 3δ\)

(三角不等式:|x + y| ≤ |x| + |y|を用いた)

 

ここで,\(δ=\frac{ε}{7}∧ 1\)と選ぶと(∧は2つのうち小さい方を選ぶという意味)

(i)\(ε≤7 ならば δ=\frac{ε}{7}\)で

\(|x^{3} + 1| < δ^{3} + 3δ^{2} + 3δ < 7δ = ε\)

(εに応じたδを選ぶため7δ = εのように「=」で結ばれている)

 

(ⅱ) ε ≥ 7 ならば, δ = 1

\(|x3 + 1| < 3 + 32 + 3 = 7 ≤ε \)

(7 ≤ εのように≤となるのは, εは大きくとれるけどδ1で固定であるため)

 

よってδは存在したので,x-1に近づくとき,f(x)-1に収束する.

 

三角不等式を用いた変形の補足
$$|x^{3} + 1| = |(x + 1)(x^{2} − x + 1)| = |x + 1||x^{2} − x + 1|
\\≤ |x + 1|(|x^{2}| + |x| + 1) (∵三角不等式)
$$
$$
|x + 1| < δ ⇔ −1 − δ < x < −1 + δ \\ここで, |−1 − δ| > | − 1 + δ|より
\\大きさは −1 − δ のほうが大きいのでこちらをxに代入する
$$

$$
< δ{(δ + 1)^{2} + δ + 1 + 1}
\\= δ^{3} + 3δ^{2} + 3δ(=ε )
$$
$$
ここで,δ =1を代入するとε=7であるから,δ=\frac{ε}{7}∧1とする.$$

 

※−1 + δを選んで計算しても上式と同じ形に導くことはできるが, 意味合いとして
−1 − δをとったほうが境目の考え方として正しい(グラフに描くとわかる)

 

(補足)
(ⅰ)ε =0.7とすると,\(δ=\frac{ε}{7}=0.1\)

εが小さくなる場合は, それに応じたδを選ぶ必要がある.

 

(ⅱ) ε = 10とすると, δ = 1

εが大きくなる場合はすべてδ = 1で条件を満たす.

 

(ⅲ) ε = 7とすると, δ = 1 (境目について)

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